犬の下痢、便の見かたと受診の目安
ぐったりしている、呼吸が苦しそう、けいれんしている、意識がはっきりしないなどの場合は、このページを読み進めず、すぐに動物病院へ連絡してください。
この内容はまだ獣医師の監修を受けていません。参考情報としてご覧ください。
この記事の要点
犬の便がゆるいとき、形・色・回数・血の有無をどう記録すれば受診が早く進むのかをまとめました。小腸性と大腸性で様子が違う理由、脱水のサインの確かめ方、便の写真の撮り方、動物病院へ連絡する目安を順に整理しています。
便は五つの項目で記録する
犬の下痢を見たら、まず「ゆるい」という印象を、形・色・量・回数・においの五つに分けて記録します。きれいな文章を書く必要はありません。排便した時刻と、その便の特徴を同じ順番でメモすると、診察で変化が伝わりやすくなります。散歩中なら、排便した場所、拾い食いを見たか、他の犬の便に近づいたかも添えます。
形を比べるときは、ブリストル便形状スケールが参考になります。人の便の分類ですが、犬の便を観察する共通の物差しとして応用できます。型1は硬い小粒が分かれている状態、型2は表面にひびがあるソーセージ状、型3は表面にひびのあるまとまり、型4はなめらかで柔らかいソーセージ状、型5は縁のある柔らかい小片、型6は形を保ちにくい泥状、型7は固形物のない水様です。犬では食事や個体差があるため、型だけで病気や原因を決めるものではありません。型5が一度だけ出たのか、型6〜7が何度も続いたのかを区別します。
色は照明や床の色で変わって見えます。便の写真は白い紙や白いペットシーツの上で撮ると、色を確認しやすくなります。便全体の写真と、血や粘液がある部分の近接写真を残し、「茶色」「黄色っぽい」「黒っぽい」「赤い筋」など文字でも説明します。スマートフォンの補正で色が変わることもあるため、写真だけに頼りません。
撮影時刻も画像の情報として残しておくと便利です。
量は、いつもの一回分と比べます。多量の便を一度に出すのか、少量を何度も出すのかで手がかりが変わります。排便回数と、便がほとんど出ないのに何度もしゃがんだ回数も分けて数えます。においは主観的でも、「普段より強い」「急に変わった」といった差は役立ちます。便の観察は採点のためではなく、症状を時系列で医療者に渡すための準備です。食事の前後で便が変わったか、散歩中に急にしたかも書きます。普段の便の写真があれば比較材料になります。便を片付ける前に、犬が踏んだり他の動物が触れたりしない安全な状態を確保してから記録しましょう。

小腸性と大腸性で様子が違う
下痢は、便の出方から小腸性と大腸性に分けて考えることがあります。これは飼い主が病名を当てる分類ではなく、獣医師に情報を整理して伝えるための見かたです。小腸は栄養や水分を吸収し、大腸は水分をさらに吸収して便を一時的にためます。両方に変化が起こる場合もあるので、特徴が当てはまっても診断とは限りません。
小腸性を示唆する便は、一回の量が普段どおりか多く、排便回数は正常からやや増える程度という傾向があります。吸収が十分でないと、量が増えたり、体重減少や食欲低下を伴ったりすることがあります。消化されていないように見える食べ物が混ざることもありますが、それだけで小腸の異常とは判断できません。吐く、腹部を痛がる、元気が落ちるなどがあれば、分類より全身状態を優先します。
大腸性では、少量の便を何度も出そうとする様子が目立ちます。散歩中に急に排便を催す、何度も姿勢をとる、出た量は少ないのにまだしたそうにする、といった状態です。しぶり、またはテネスムスとは、便が残っているように感じて力むことです。粘液が付着し、鮮やかな赤い血が便の表面や最後に混ざる場合もあります。大腸の刺激で見られるパターンですが、血があれば原因の確認が必要です。
飼い主が記録するなら、「量・回数・急ぎ方・力み・粘液・血」をひとまとめにします。「午前7時に普通量の軟便、11時から少量を4回、毎回力み、最後に透明な粘液」という記録です。「下痢が続く」だけより、診察で状況を再現しやすくなります。
一回ごとの便を比べると、状態が良くなっているのか、形は戻っても回数が増えているのかが分かります。散歩を短く切り上げた場合や、室内で漏らした場合も、失敗として叱らず記録に含めます。排便を我慢できないほど急ぐこと自体が、診察で伝える大切な変化になります。
| 観察項目 | 小腸性を示唆する傾向 | 大腸性を示唆する傾向 |
|---|---|---|
| 一回の量 | 普通量〜多い | 少ない |
| 回数 | 普通〜やや増える | とても多い |
| 便意 | 目立たないことがある | 急ぎやすい |
| 力み | 目立たないことがある | 起こりやすい |
| 粘液 | 少ないことが多い | 付くことが多い |
| 血 | 黒っぽい血のことがある | 鮮血のことがある |
色と混ざりものを確認する
黒く、ねっとりしたタール状の便は、胃や小腸など上部消化管からの出血が通過中に変化した状態を示すことがあります。食べ物やサプリメントで黒く見えることもあるため、色だけで出血と決めつけられません。それでもタールのような黒色便は、動物病院へ連絡する情報として優先度が高いものです。墨色か、表面が光るか、粘りがあるかを写真とともに伝えます。
鮮やかな赤い血は、便の表面、便の最後、粘液の中などに見られます。大腸や肛門に近い場所の刺激で見えることがありますが、色だけで出血部位は決められません。血が何度も出る、量が増える、水様便になる、元気や食欲が落ちる場合は、早めに病院へ相談します。便を処理した後は手を洗い、素手で触れません。
透明、白っぽい、ゼリー状の粘液は、大腸の粘膜から出る分泌物が付いたものとして見られることがあります。大腸性の手がかりにはなりますが、感染性のもの、食事の変化、寄生虫など複数の可能性があります。白い粒や米粒のようなものは寄生虫の一部を思わせる場合がありますが、未消化の食材や床材にも似ます。つぶしたり薬を与えたりせず、写真と現物を持参します。
緑、黄色、灰色、オレンジなどの色も、食べた物、胆汁、腸を通る速さなどで見えることがあります。色だけで特定の病気に結びつけず、一回だけか、何回も続くか、嘔吐、腹痛らしい様子、食欲低下を伴うかを確認します。おもちゃの破片、布、骨、ひも、植物片などがあれば、異物を飲み込んだ可能性を伝えるため、捨てずに保管します。
「血便」でも、鮮血と黒色便では獣医師が考える情報が異なります。血が便の内側か表面か、粘液やしぶりがあるかも重要です。便の色を病名に直結させず、「何を疑って検査するか」を決める材料として記録しましょう。赤や黒に見える部分が便全体に混ざるのか、表面に筋として付くのかを見分けます。ティッシュでこすって色を確かめようとせず、写真と現物をそのまま保管します。
脱水と体力の消耗を見逃さない
水様便が続くと、便の水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質も失われることがあります。脱水の手がかりには、歯ぐきの乾きやねばつき、目が落ちくぼんだように見える、皮膚をつまんで戻るのが遅い、尿が少ない、ぐったりするなどがあります。ただし皮膚の戻り方は年齢や体格でも変わり、家庭で重症度を正確に判定できる検査ではありません。
体重に対する割合で考えると、小さな犬の変化は大きくなります。体重5kgの犬の5%は250gで、単純計算では体液約250mLに相当します。実際の脱水量は便、嘔吐、飲水、尿、体内への移動で変わり、排便量をそのまま脱水量とはみなしません。それでも、下痢が始まった日の体重と現在の体重を同じ条件で測れると有用です。抱っこして人の体重との差を取る方法もあります。
子犬は成犬より体の予備が少なく、下痢に嘔吐や食欲低下が重なると、脱水と低血糖が早く進むことがあります。特に離乳前後の小さな子、ワクチン接種が途中の子は、元気に見える時間があってもこまめに確認します。小型犬も一回の水様便が体重に占める割合が大きくなりやすく、高齢犬は持病や体力低下が重なることがあります。
水を飲める場所を清潔に保ち、無理に大量の水を飲ませたり、自己判断で絶食したりしないでください。市販薬や人用の薬も与えません。水を受け付けない、飲んでも吐く、立ち上がれない、反応が鈍い、歯ぐきが白っぽいなどがあれば、家庭での観察を続ける場面ではありません。夜間なら夜間診療を含めて病院へ電話し、年齢、体重、下痢と嘔吐の回数、歩けるかを伝えます。 水を飲める場所を清潔に保ち、無理に大量の水を飲ませたり、自己判断で絶食したりしないでください。市販薬や人用の薬も与えません。水を受け付けない、飲んでも吐く、立ち上がれない、反応が鈍い、歯ぐきが白っぽいなどがあれば、家庭での観察を続ける場面ではありません。夜間なら夜間診療を含めて病院へ電話し、年齢、体重、下痢と嘔吐の回数、歩けるかを伝えます。水を飲んだ量は、器に入れた量と残った量から大まかに記録できます。尿の回数も、散歩の時刻と一緒に書きます。

動物病院へ連絡する目安
意識がぼんやりする、立てない・倒れる、呼吸が苦しそう、歯ぐきが白い・青紫色に見える、腹部が張って強く痛がる、繰り返し吐いて水も保てない、大量の血が出る、黒いタール状便が出る、けいれんがある場合は、時間を置かず動物病院へ連絡します。子犬、超小型犬、高齢犬、妊娠中の犬、持病や投薬中の犬も、早めに相談します。電話を先に入れると、感染症の可能性がある犬の待ち方を案内してもらえることがあります。
急性の激しい下痢と嘔吐、元気消失、食欲不振が組み合わさると、犬パルボウイルス感染症などの感染性疾患が候補に入ることがあります。パルボウイルスでは、初めは元気消失や食欲不振などから始まり、24〜48時間で嘔吐や血の混じる下痢へ進むことがあるとされますが、血のない下痢の場合もあります。ワクチン歴が不明、接種途中、他の犬が多い場所へ行った後などは必ず伝えます。診断がつくまでは、他の犬との接触、共有の水皿、ドッグランやペットホテルの利用を控え、便を適切に片付けます。
寄生虫も、下痢、粘液、血、体重の変化の背景に含まれます。便検査は一回では見つかりにくい寄生虫もあり、検査法や再検査の要否は獣医師が判断します。散歩場所、同居動物、駆虫薬の名前と日付を伝えます。人にうつる可能性があるものも一部にはあるため、子どもや免疫が弱い人がいる家庭では、便の処理と手洗いを丁寧にします。
腹痛、背中を丸める、祈りの姿勢を繰り返す、吐く、食べない、腹部が張るという組み合わせでは、膵炎や消化管の閉塞、異物なども候補になります。ひもや布のような異物が口や肛門から見えても、引っ張らないでください。腸を傷つけるおそれがあるため、見えている状態を写真に撮ってすぐ相談します。症状だけで膵炎や異物とは断定できず、触診、血液検査、画像検査などが必要になることがあります。
水様便が何度も続く、血や粘液が繰り返す、食欲が戻らない、体重が減る、軟便が数日続く、慢性的にぶり返す場合は、診療時間内に相談します。電話では「いつから」「何回」「どの色と形」「食べたか飲んだか」「吐いたか」「元気に歩けるか」を順番に伝えます。 水様便が何度も続く、血や粘液が繰り返す、食欲が戻らない、体重が減る、軟便が数日続く、慢性的にぶり返す場合は、診療時間内に相談します。電話では「いつから」「何回」「どの色と形」「食べたか飲んだか」「吐いたか」「元気に歩けるか」を順番に伝えます。受診の目安は便の回数だけで決まりません。年齢、体格、持病、嘔吐、飲水と尿、症状の勢いを合わせて考え、迷うときは病院へ電話します。
きっかけとして多いもの
最初に確認したいのは食事の変化です。フードの銘柄、粒の種類、主原料、トッピング、おやつの種類や量が数日以内に変わっていないかを振り返ります。新しいフードへの切り替え中なら、始めた日と混ぜた割合を記録します。食物アレルギーや食物不耐性が関係することもありますが、一度の軟便だけで原因は特定できません。自己判断で多くの食材を次々に除くと、何が影響したか分かりにくくなります。
拾い食いは、散歩中の食べ物だけではありません。家庭のゴミ、落ちたおやつ、観葉植物、玩具の部品、洗濯物、骨、脂の多い食べ物も候補です。食べた時刻と量が分かれば書き、包装や残りを持参します。チョコレート、ぶどう・レーズン、キシリトールを含む食品、人用の薬、洗剤などが疑われるときは、下痢を待たず病院へ連絡します。吐かせる方法を自己判断で試すのは避けます。
引っ越し、旅行、来客、工事の音、生活時間の変化、同居動物の増減などがストレスとなり、腸の動きに影響することもあります。ペットホテルやトリミング、長時間の留守番の後なら、場所、食事、排便、他の動物との接触をメモします。ストレスが関係しそうでも、感染症や食事の問題を除外できるわけではありません。「ストレスだから」と決めつけず、便以外の変化も見ます。
寄生虫や感染性の病原体は、外見だけでは区別できません。子犬を迎えたばかり、保護施設などから移動した、他の犬の便がある場所を歩いた、川や池の水を飲んだ、同居犬にも症状がある、といった情報が検査の手がかりになります。ワクチンはすべての下痢を防ぐものではありませんが、犬パルボウイルスなど予防接種で防げる病気を考える際に重要です。接種日、ワクチンの種類、最後の接種からの期間を証明書で確認します。
食事、拾い食い、環境、寄生虫、ワクチン歴は、原因を一つに絞るチェックリストではありません。同じ日に複数の要因が重なることもあります。整腸剤や下痢止めを含め、市販薬や人用の薬を犬に与えず、服用中の薬やサプリメントがあれば名前と量を伝えます。「何を食べたか」だけでなく、「いつから、どう変わったか」を示すことが大切です。 食事、拾い食い、環境、寄生虫、ワクチン歴は、原因を一つに絞るチェックリストではありません。同じ日に複数の要因が重なることもあります。整腸剤や下痢止めを含め、市販薬や人用の薬を犬に与えず、服用中の薬やサプリメントがあれば名前と量を伝えます。「何を食べたか」だけでなく、「いつから、どう変わったか」を示すことが大切です。フードの袋やおやつの包装は、原材料や賞味期限を確認できるため、捨てずに置いておきます。複数の犬がいる家庭では、誰の便かも確認します。
受診時に持っていくものと記録
受診には、できれば新鮮な便を少量持っていきます。便検査用の便は乾かさず、草や砂が混ざらないよう、清潔で乾いた密閉容器や袋に入れます。採取後は冷蔵し、数時間以内を目安に持参します。検査項目で必要量や保存条件が異なるため、受診先へ確認してください。一般的な便検査では、すぐに持参できない場合、冷蔵した便を24時間以内に受け付ける案内がありますが、病院の指示を優先します。冷凍したり消毒液を混ぜたりはしません。
便の写真は排便直後に白い紙や白いペットシーツの上で撮ります。全体像、血や粘液の部分、量が分かる周囲の写真を残し、撮影時刻と排便時刻をメモします。現物を持参できなくても、写真があれば型、色、血の位置、粘液の量を説明しやすくなります。撮影のために散歩や片付けを遅らせる必要はありません。安全を確保し、他の犬や子どもが触れないようにします。
食事については、フードの正式な銘柄名、製品名、主原料、開封日、保管状態、1日の量、おやつ、トッピングをまとめます。新しい袋を開けた、保存場所が変わった、家族が別のおやつを与えた、といった小さな変化も含めます。異物や拾い食いが疑われるときは、包装、写真、残りを持参します。中毒が疑われる食品は成分表示と食べた可能性のある量が重要です。
時系列メモは、次の項目を縦に並べるだけで十分です。
- 下痢が始まった日時と、その前24〜48時間の食事・散歩・イベント
- 排便の時刻、回数、量、ブリストルスケールの型、色、血、粘液、におい
- 嘔吐、腹痛らしい姿勢、元気、食欲、飲水、尿の変化
- 体重、年齢、避妊去勢の有無、持病、現在の薬やサプリメント
- ワクチンと駆虫の履歴、他の犬や猫との接触、同居動物の症状
診察では、最初に「黒い便が出た」「水を飲んでも吐く」「子犬で食べていない」「ひもを食べたかもしれない」など、一番気になることを伝えます。そのうえで写真と時系列を見せると、検便、血液検査、画像検査など必要な確認を相談しやすくなります。便の形を観察する目的は家庭で診断することではなく、犬の変化を正確に医療者へ手渡すことです。 診察では、最初に「黒い便が出た」「水を飲んでも吐く」「子犬で食べていない」「ひもを食べたかもしれない」など、一番気になることを伝えます。そのうえで写真と時系列を見せると、検便、血液検査、画像検査など必要な確認を相談しやすくなります。便の形を観察する目的は家庭で診断することではなく、犬の変化を正確に医療者へ手渡すことです。便を採るために散歩を中断できないときは、まず犬の安全と受診を優先し、写真だけでも残します。検査結果を待つ間も、元気、食欲、飲水、嘔吐、排便を更新して記録します。
参考・出典
- Introduction to Digestive Disorders of Dogs(MSD Veterinary Manual・2025年閲覧)
- Differentiation of Small Intestinal from Large Intestinal Diarrhea(MSD Veterinary Manual・2025年閲覧)
- Canine Parvovirus Infection(MSD Veterinary Manual・2025年閲覧)
- Importance of Fecal Tests in Dogs & Cats(VCA Animal Hospitals・2025年閲覧)
- 予防接種で防げる犬と猫の主な病気(環境省・2018年)
- ペットフード安全法Q&A(環境省・2025年閲覧)
本記事の情報は一般的な情報提供であり、診断・治療を目的としたものではありません。個々の状態については、かかりつけの動物病院にご相談ください。

