犬がごはんを食べない、時間軸で考える
ぐったりしている、呼吸が苦しそう、けいれんしている、意識がはっきりしないなどの場合は、このページを読み進めず、すぐに動物病院へ連絡してください。
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この記事の要点
犬がごはんを食べないとき、経過時間と水分と元気の有無で見当がつきます。「食べない」を三つに分ける考え方、成犬と子犬で変わる相談の目安、口の痛みや環境という見落としやすい要因、受診までに整理しておく記録をまとめました。
「食べない」を3つに分ける
犬の食欲が落ちたとき、まず確認したいのは「食べない」という言葉の中身です。いつものドライフードを残しただけなのか、好物やおやつも口にしないのか、それとも食べたい気持ちはありそうなのに口へ運べないのかで、考える方向が変わります。食器の前まで来る、においを嗅ぐ、舌を出しかけるといった反応があるなら、食欲そのものが消えたとは限りません。
ひとつ目は、まったく食べない状態です。主食もおやつも食べず、食べ物への反応が乏しい場合は、胃腸の不調、発熱、痛み、薬の影響など、全身状態の変化が背景にあるときにも見られます。元気に見える犬でも、食べない時間が続くほど、食べた量だけでなく水分や排泄を一緒に確認する意味が大きくなります。
ふたつ目は、フードだけ食べない状態です。おやつや人の食べ物には反応するなら、味や香り、粒の硬さ、食器の位置、与える時間帯など、食事の条件を見直す余地があります。ただし、おやつを食べるから体調に問題がないとは言えません。やわらかい物だけを選ぶ、少量しか食べないという変化は、口の痛みや吐き気があるときにも起こります。
みっつ目は、食べたそうなのに食べられない状態です。口へ入れようとして落とす、何度も噛み直す、片側だけで噛む、飲み込む前に離す、食器に近づいても顔をそむけるといった様子が手がかりになります。歯周病、折れた歯、口内炎、口の中に異物があるときにも見られます。首や背中の痛み、食道の違和感などが関わる場合もあり、単なる好き嫌いと決めつけないことが大切です。
「元気はあるようだから急がなくてもよい」と考えたくなる場面でも、普段と違う食べ方が何食続いたかを残しておきましょう。食欲は体調変化の早いサインのひとつです。食べた量をざっくりでも記録し、飲水量、便、尿、嘔吐の有無と組み合わせると、動物病院へ相談するときに状況を伝えやすくなります。
一回の食事だけで結論を出すのではなく、普段の食べ方との差を比べます。毎回数分で完食していた犬が、食器の前にいる時間だけ長くなったのか、食事に関心を示さず寝ているのかでも意味は変わります。食事の前後に散歩や来客があったか、いつもと違う物を口にした可能性があるかも、時系列で確認します。

経過時間で考える
食べない時間は、時計だけで機械的に判定するものではありません。年齢、体格、持病、最後に食べた量、飲水の状態、嘔吐や下痢の有無を重ねて考えます。同じ「朝から食べない」でも、健康な成犬と生後数か月の子犬では、相談の優先度が異なります。
成犬で、食べない以外は普段どおりに見える場合でも、半日ほど食事を拒む、または次の食事もほぼ食べないなら、かかりつけへ電話で相談する目安にします。環境省の飼い主向け資料には、正常な犬でも1〜2日食べない個体がいる一方、積極的に食べないことは病気の前兆として考える記載があります。これは「1〜2日待てばよい」という意味ではありません。食べない程度が強い、変化が急、飲水や排泄も違うという場合は、時間を短く見積もります。
子犬は、成犬の基準をそのまま当てはめないでください。特に離乳期から小型犬の成長期は、体に蓄えられるエネルギーが少なく、食べられない状態に嘔吐や下痢が加わると、低血糖(血液中のブドウ糖が不足した状態)へ進むことがあります。ぐったりする、ふらつく、震える、反応が鈍い、けいれんのような動きがある場合は、時間を測って様子を見続ける段階ではありません。すぐ動物病院へ連絡し、月齢、体重、最後に食べた時刻を伝えます。
高齢犬は、食欲低下の背景に歯や口の痛み、腎臓・肝臓などの慢性疾患、嗅覚の変化、腫瘍性疾患などが関わることがあります。高齢だから食が細くなったと決めず、いつもの食事量から何割減ったかを見ます。半日程度でも繰り返す、体重が減る、飲水量が変わるときは、早めの相談が適しています。
糖尿病などで食事や投薬の管理をしている犬、腎臓病・心臓病などの治療中の犬、妊娠・授乳中の犬は、主治医から示されている連絡基準を優先します。処方薬には食事と関係するものがあり、食べていないからといって自己判断で投薬を中止したり、人用の薬を与えたりしないでください。迷った時点で病院へ電話し、薬名と最後に食べた量を確認して相談しましょう。
時間を数える起点は、最後に「いつもの量に近く食べた時刻」です。数粒を口にしただけ、吐いた分を差し引くとほとんど残っている、という場合は、完食した時刻として扱いません。病院へ連絡する際は、最後に食べた時刻だけでなく、その前の食事量も伝えると、獣医師が経過を読み取りやすくなります。
水を飲めているかが最初の分かれ道
食べ物より先に見るのは、水を飲めているか、飲んだ水を保てているかです。水を飲む量は気温、運動量、授乳、フードの水分量、年齢などで変わりますが、一般的な目安は体重1kgあたり1日およそ50mL前後です。資料によって40〜60mL、50〜70mLなど幅があるため、数字は合否判定ではなく、その犬の普段を知るための起点と考えます。ウェットフードを食べている日は、食事に含まれる水分も一部になります。
たとえば体重8kgなら、単純計算で1日約400mLが目安になります。ただし、暑い日や散歩が長かった日は増えることがあり、缶詰中心なら器から飲む量が少なくなることがあります。反対に、急に何度も水を飲む、器がいつもより早く空く、水を飲む量の変化と尿量の増加が一緒にある場合も、食欲低下と同じ記録に入れてください。糖尿病や腎臓の病気などのときにも見られる変化です。
測るときは、朝に決めた量の水を器へ入れ、途中で継ぎ足した量をメモします。複数の器がある家庭では、同じ容器にまとめるか、器ごとに分けて記録します。こぼした分、散歩中に飲んだ分、食事へ加えた水も分かる範囲で書き足します。24時間後に残った量を差し引けば、摂取量の大まかな見当がつきます。自動給水器を使っているなら、満水時の量と補充量を一度計っておくと便利です。
水を飲まないだけでなく、口をつけても吐く、何度も少量を吐く、立ち上がる力が弱い、歯ぐきが乾いて見えるといった場合は、脱水(体内の水分が不足した状態)が進んでいる可能性があります。歯ぐきの湿り気だけで脱水の程度を正確に判断することはできません。無理に大量の水や食べ物を流し込むと、吐いたり気道へ入ったりするおそれがあるため、動物病院に連絡して指示を受けます。
飲水量の数字が目安から外れたとしても、直ちに特定の病気を意味するわけではありません。ドライフードからウェットフードへ替えた日、長く運動した日、暑かった日には変動します。一方で、食べないことに加えて急に水を多く飲む、ほとんど飲まない、尿の回数が変わるという組み合わせは、診察で重要な情報になります。普段の器の大きさだけで判断せず、実際のミリリットルに置き換えて記録します。

口の中と食べ方を見る
食べ物に近づくのに、口へ入れた直後に落とす。硬い粒を避け、ふやかした物やペースト状の物だけを食べる。片側で噛む、食事の途中で顔を上げる、口元を前足でこする。このような食べ方の変化は、食欲がないというより、噛む・飲み込む動作に痛みや違和感があるときにも見られます。
確認したい観察項目は、よだれの量、口臭の変化、出血、歯ぐきの赤み、歯のぐらつき、頬の腫れです。口臭は歯垢や歯石、歯周病に伴う炎症などで強くなることがありますが、においだけで原因を確定することはできません。口を開けるのを嫌がる犬もいるため、無理に指を入れたり、奥までライトで探ったりしないでください。咬まれる危険があるうえ、異物を押し込むことがあります。
骨や硬いおもちゃ、植物の茎などが口の中や歯の間に残っている場合もあります。見えていても、引っ張ると粘膜を傷つけそうな物、糸状の物、深く刺さっている物は自宅で抜こうとせず、動物病院へ相談します。食べ物を飲み込めない、呼吸が苦しそう、舌や顔が急に腫れた場合は、口の痛みの観察より連絡を優先する状態です。
「好きな物なら食べる」は、口の痛みを否定する材料になりません。香りの強いウェットフードなら食べられる、柔らかいおやつだけなら口にできるという犬もいます。逆に、食器の高さや場所が変わったことで首を下げにくくなり、食べづらそうにすることもあります。動画を短く撮影し、正面と横からの食べ方を残しておくと、診察室で再現しにくい様子を獣医師に見せられます。
食事を工夫する場合も、何種類も一度に試すのは避けます。ふやかす、器を洗って乾かす、静かな場所で一頭ずつ与えるなど、変更は一つずつにします。食べられた量と食後の様子を記録し、食べたから終了ではなく、噛み方・飲み込み方に不自然さが残っていないかを見ます。
口の中を観察した後に、口を気にする仕草が増えた、よだれが続く、顔を触られるのを嫌がる、食器を避けるといった変化があれば、写真や動画を残して早めに相談します。歯磨きや歯石取りを急に始めるのは、痛みや出血を強めることがあります。家庭でできるのは、無理のない範囲の観察と、食べられた形状・量の記録までです。
環境・心理的な要因
食欲は、体だけでなく周囲の環境にも左右されます。夏の暑さや湿気、散歩量の変化、暖房による室温の上昇で、いつもの食事時間に食べる量が減る犬がいます。高温の場所で長く過ごした後、パンティング(口を開けて速く呼吸すること)が強い、体が熱い、ぐったりしている場合は、単なる夏ばてと決めつけず、暑熱の影響がないかを動物病院へ相談します。
引っ越し、家具の配置換え、工事音、家族の勤務時間の変更、新しい家族や動物を迎えたことも、食器へ向かう行動を変えることがあります。食べる場所を人の往来が少ない所へ移し、毎日ほぼ同じ時刻に落ち着いて与えると、変化を確認しやすくなります。多頭飼いでは、他の犬に急かされて食べられない、逆に相手の食事を食べて自分の量が分からないことがあるため、食事を分けて計量します。
フード自体の状態も見ます。ドライフードは開封後、空気や湿気に触れることで香りや品質が変わります。ペットフード協会は、ドライフードを開封後約1か月で使い切る目安を示しています。袋の口を閉じ、直射日光を避けた常温の低温・低湿度の場所で保管し、油っぽいにおい、湿気、変色、虫、カビがあれば与えません。賞味期限内でも、保管状態やにおいが普段と違うときは新しい袋と比較します。
急なフードの切り替えも、食べ渋りや便の変化につながることがあります。切り替えるなら、獣医師から別の指示がない限り、数日から1週間程度かけて旧フードに新フードを少量ずつ混ぜる方法が一般的です。療法食は病気や検査結果に合わせて使う食事なので、嗜好性だけを理由に別の食事へ変更せず、主治医へ相談します。
おやつの与えすぎも見落としやすい要因です。トレーニング用の小さな一片が何度も重なると、主食の時間に空腹を感じにくくなります。家族がそれぞれ与えているなら、一日分を容器に取り分け、そこから使うと量を把握できます。おやつを減らしても主食を食べない、食べ方に痛みがある、元気や便尿が変わったという場合は、環境だけでは説明できないことがあります。
環境を変えて反応を見る場合は、食べるよう促してそばを離れない、手から次々に与えるといった方法を重ねすぎないようにします。食べないたびに特別な物が出ると、主食との関係が分かりにくくなります。静かな場所、清潔な器、決まった時間という基本を整えたうえで、短時間で片づけます。改善しない経過そのものも、病院へ伝えるべき情報です。
動物病院へ連絡する目安
まず、お腹が張って苦しそう、吐こうとしているのに何も出ない、落ち着かず歩き回る、呼吸が苦しそう、歯ぐきが白い・青紫、ぐったりして反応が弱い、けいれんやふらつきがある場合は、食欲の経過を待たず、すぐ動物病院へ連絡します。腹部の張りと空えずきの組み合わせは、胃拡張胃捻転など緊急性の高い状態の初期にも見られるため、夜間でも受診先へ電話で確認します。誤食や中毒の可能性があるときも、包装や成分表示を手元に置いて連絡し、自己判断で吐かせません。
嘔吐や下痢が食欲低下と同時に起きている場合は、回数、血液や黒い色の有無、水を保てるかを確認します。繰り返す嘔吐・下痢、血便、腹痛、脱水、弱っていく様子は、早めの診察が必要になることがあります。特に体の小さい犬、子犬、高齢犬、持病のある犬は、体液の変化が大きくなりやすいため、成犬の「次の食事まで」という目安を当てはめません。
緊急サインがなくても、まったく食べない状態が半日以上続く、次の食事もほぼ残す、食べたいのに痛そうにする、水分も取れないという場合は、かかりつけへ相談します。糖尿病の犬が一食でも拒んだ、投薬と食事の組み合わせが分からない、処方食を食べないというときは、自己判断で薬の量を変えず、主治医へ確認します。
体重減少がある場合は、食べない日数だけで区切らず、数日から数週間の推移を見ます。食事量が少しずつ減っている、よく食べる日もあるが体重が落ちる、飲水や尿が増えた、筋肉が細くなったという変化は、慢性的な病気のときにも見られます。早めに予約を取り、体重の記録とフードの情報を持参します。
動物病院へ電話するときは、「犬が食べません」だけでなく、最後に普段の何割を食べたか、最後に水を飲んだ時刻、嘔吐・下痢の回数、誤食の可能性、元気と呼吸の状態を伝えます。病院の診療時間外なら、地域の夜間救急の案内をかかりつけに尋ねます。移動まで無理に食べさせたり飲ませたりせず、病院からの指示に従います。
呼吸の速さや歯ぐきの色を確認するときも、犬を追い回したり口をこじ開けたりしません。安静にしているときの様子を観察し、苦しそうなら電話を優先します。腹部を強く押して痛みを確かめる、吐かせるために塩や油を飲ませる、といった家庭処置は避けます。夜間受診では、到着前に電話で症状と現在地を伝えると、必要な準備や移動時の注意を案内してもらえることがあります。
受診までに整理しておく記録
受診前の記録は、診断を自宅で決めるためではなく、獣医師が時間の流れを把握するために役立ちます。最初に、食欲が落ちたと気づいた日時を書きます。「昨日から」より、「9月5日19時の夕食を通常の半分、9月6日7時は口をつけなかった」のように、時刻と量を分けると情報が明確です。
体重は、同じ体重計、できれば同じ時間帯、同じ条件で測ります。食前・排泄前後で数字が動くため、毎回条件をそろえることが大切です。抱っこして測る場合は、飼い主だけの体重を引く方法でも構いませんが、犬が動いて危険なら無理をしません。1回の数値より、日付と一緒に並べた推移を見ます。
食事については、フードの商品名、ドライかウェットか、1回量、実際に食べた量、開封日、保存場所を記録します。おやつ、人の食べ物、サプリメント、拾い食いの可能性も含めます。急にフードを切り替えた場合は、旧製品と新製品をいつから何割ずつ混ぜたかを書きます。食器の高さや場所を変えた、家族が別の物を与えたという出来事も手がかりになります。
便と尿は、回数だけでなく状態を残します。便の色、硬さ、水っぽさ、粘液や血の有無、いつもより強いにおいがあるかを見ます。尿は回数、量の印象、色、排尿時に痛がる様子があるかを記録します。吐いた場合は、時刻、回数、量の印象、食後何分だったか、血や異物が混じっていないかをメモします。写真を撮れる状況なら、無理に触らず撮影しておくと説明に使えます。
水は、24時間に器へ入れた量と残った量、補充した量、食事に加えた水、散歩中に飲んだ量をまとめます。多頭飼いで正確に測れない場合は、個別の器にして測れる時間帯を作り、「正確ではない」と明記します。食べ方の動画、呼吸や歩き方の短い動画も、撮影できる範囲で役立ちます。撮影のために食事を遅らせたり、口を無理に開けたりしないでください。
最後に、現在飲んでいる処方薬の名前と量、投薬時刻、予防薬、持病、最近の検査結果、誤食したかもしれない物の包装をそろえます。記録は長文の日記にする必要はありません。時刻、食事、水、便、尿、吐いたか、元気の変化を一枚に並べるだけで、食べないという出来事を時間軸で伝えられます。
可能なら、普段の体重、食器一杯が何グラムか、通常の便と尿の頻度も平常時に記録しておきます。比較対象があると、「少し減った」「いつもより多い」を具体的にできます。記録をつけることは受診を遅らせるためではありません。ぐったりする、繰り返し吐く、腹部が張るなどの変化が出たら、メモを完成させるより先に動物病院へ連絡します。
参考・出典
- 飼い主のためのペットフード・ガイドライン〜犬・猫の健康を守るために〜(環境省・2018年)
- 飼い主さんの安全なペットフード利用について(一般社団法人ペットフード協会・2019年)
- Code of Welfare: Dogs(ニュージーランド第一次産業省・2024年)
- Loss of Appetite(VCA Animal Hospitals・年不詳)
- Common Emergencies in Dogs(VCA Animal Hospitals・2024年)
- Management of the Neonate in Dogs and Cats(MSD Veterinary Manual・2022年)
- Nutritional Requirements of Small Animals(MSD Veterinary Manual・年不詳)
本記事の情報は一般的な情報提供であり、診断・治療を目的としたものではありません。個々の状態については、かかりつけの動物病院にご相談ください。

